2009年1月27日火曜日
【猫哲学75】 猫スペースオペラ。
猫┃哲┃学┃の┃お┃部┃屋┃μ┃
(2005/09/09)
もしもわが家が無重力空間だったら、バカ猫はどうやって昼寝をするのかな。
私はときどき、ヘンなことを想像する。
もしも無重力だったら、バカ猫は重力をうまく利用できないから、丸くなれない。身体を丸くするのには、重力から生じる床との摩擦抵抗が必要なのだ。スペースシャトルから送られてくる映像では、人間たちは妙に手足がゆるんでいるでしょう。あれと同じように、身体を丸くできなかったバカ猫は、伸びきったしまりのない格好で寝るしかない。
さて、それでもいいやと寝ることができたとして、熟睡しても身体というのはときどき動くから、いつしか床から浮いてしまう。バカ猫はふわふわ浮遊しつつ壁にぶつかり天井にぶつかり、寝返りをうつたびに回転し、しかし回転すると頭や手足に遠心力がかかってなんか落ち着かないから、目が覚めてしまう。そこで回転を止めようとして壁や床を蹴ったら逆回転がかかり、逆回転を止めようとしたらさらに逆の逆回転がかかり…。やがてバカ猫は高速回転しながら部屋中を飛び回ることになるだろう。
あははバカ猫。おもしろいやつだな、おまえ。
(おもしろいのはあんたニャ:byバカ猫)
何をくだらないことを考えているのかって? はい、アホですよ、私は。でもね、こういう風に想像力を鍛えておくことは、SFの宇宙ものを鑑賞するのには、ぜひ必要なことなのだ。
むかし、スペースオペラというのが好きだった。私が中学生だった頃にはハヤカワ文庫で宇宙ものがどんどん翻訳されていて、片っ端から読んだものである。ぜんぶ忘れてしまったけど。
アストロノーツにスペースシップ、宇宙ステーション、宇宙海賊、惑星連合、銀河帝国興亡史、どういうわけだか超美人のお姫様。こーゆーのをロマンというのだよねえ。
私がそういうジャンルの文庫本に耽溺していたのはだいたい1960年代後半の頃で、アメリカでは同時期に同じジャンルのテレビドラマや映画も盛んに制作されていた。『禁断の惑星』『宇宙家族ロビンソン』『スタートレック(初期シリーズ)』、おお懐かしや、ミスター・スポック。
1970年代になるとこうした映像作品が日本に輸入されて、テレビでも観ることができるようになった。それらを観ながら、いつしか私は強烈な違和感を覚えるようになっていったのである。
そう、親しみでなくて違和感。何か違うんでないかいこれ、という感じ。
ハヤカワの文庫本ならばそれでよかった。「こうしてロケットは小惑星を回避し…」などと書いてあっても、そうか回避できたんだ、よかったー、と喜んでいればそれですんだ。しかし、テレビとなるとそうはいかない。映像のロケットは実際に動いて、小惑星を回避しなければならない。その動きは無重力の宇宙空間の動きでなければならない。ところが…。
いや、細部にはいる前に、構造的な話からいこう。
スペースオペラなのだから、広大無辺な宇宙がその舞台だ。だからこそ憧れもし、ときめきもする。ところが人間は残念ながら宇宙空間に生身で出ていくことができないので、人間のドラマを描こうとすると宇宙船の内部が舞台になってしまう。これでは宇宙の話のはずが、狭苦しい密室ドラマになってしまう。
むりやり宇宙空間に出ようとしたならごつい宇宙服が必要で、宇宙服というのは顔のところだけが透明だから、役者は表情だけで演技するしかない。宇宙のドラマのはずが顔だけドラマ。
こういうジレンマを避けようとして、惑星ものというのが制作されるようになった。宇宙のどこかの惑星が舞台になる。地球ではない惑星なんだから、大気組成はかなり地球と違うと考えるべきだと思うが、登場人物たちは酸素マスクもなしに平気でどんどん出歩く。不思議なことに重力の大きさまで似ているらしい。ごく自然な動きで歩いたり走ったりする。でもよく考えるとそれって、地球上とほんどいっしょじゃないのか?
つまりスペースオペラのはずが、密室ドラマか顔だけドラマ、あるいは地球上とそう変わらないドラマ。これじゃあいったい、何をやっているんだか。
この情けないパラドックスを避けることのできた映画は、皆無じゃないかな。あの有名な『2001年宇宙の旅』だって、けっきょく密室ドラマだったし。
もうひとつの構造的な難問は、無重力空間で物体が実際にどのように動くのかを再現することが、不可能に近いということである。
我々は重力のある地球上という場所にいて、無重力を経験することは滅多にない。ごく少数の宇宙飛行士しか無重力とはどういうものかを知らないし、その宇宙飛行士にしたって無重力についてすべての経験をしているわけではない。そこで仕方がないから、想像力を総動員して映画を撮るわけだが、あくまで想像は想像、実際に撮影してみると、あちこちで矛盾が生じる。その矛盾をペロっと見破ってしまうようなトレーニングを日々やっている私にしてみれば、なあんだ、とがっかりすることになるのである。
とある有名な映画の一シーン。未来の宇宙旅客船で、スチュワーデスさん(?)が飲み物を運んでくるのだけど、無重力だから磁石のついた靴を床にくっつけて歩いているという演技をしていた。だけど、飲み物はトレーの上に載せていた。(爆笑)(どこがおかしいのかわからない人は、これ以上読まないように)。
とまあこんなことを思いつつ、なんでハヤカワの文庫本だとドキドキするに、映画やテレビだとつまらないのだろうかとつらつら考えた。そして、私はあるとき、はたと重大なことに気付いたのである。
文章を読むとき、誰でも想像力をバリバリに働かせて読んでいる。スペースオペラを読むときなんて、空間的な想像力を最大限に動員している。そのときには、宇宙が心の中にある。だから面白いのだ。
ところがテレビや映画を観ているときには、その空間的な想像力はまったく働いていない。心は映画のスクリーンから、ほとんど外に出ていかない。それで、ちっとも面白くないのだ。
なぜこういうことになっているのかは、よくわからない。意識の中で文章的な情報と映像的な情報を処理するプロセスに何かの違いがあるのかもしれない。あるいは映画のほうが、想像力を刺激しない程度のヘボなのかもしれない。よくわからないけど、でも、とにかくそうなのである。
ということなわけで、今回は早々と結論へいっとこう。スペースオペラは文章で読むべし。映画じゃダメ。
つまりジョージ・ルーカスは、どうやったってハヤカワの文庫本に勝てないということなのである。ほひょ。
さて、そのルーカス制作による超メジャーなスペースオペラ『スターウォーズ』も、この夏でシリーズが完結したらしい。この映画はメジャーなスペースオペラにふさわしく、私がここまで指摘してきたようなジレンマがてんこ盛りで、面白くてしょうがない。ここで、私がこの映画を観ながら心の中で叫んでいるツッコミを、以下に列挙してみるだよ。
『スターウォーズ』シリーズを観たことのない読者なんていないだろうから、代表的な戦闘シーンなんかを思い浮かべながら、読んでみてください。
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●無重力空間では、物体は放物線を描いて飛ばない。
●宇宙空間では、煙ができない。爆発が生じると、空気抵抗がないためにどんな微細なチリでも大きな破片と等速で飛んでいく。しかも力の生じた方向に偏るから、ゆがんだ円錐状に広がる。
●エネルギービーム砲の弾丸は光速だから、飛んでいくのを横から見ることはできない。もしもホコリやガスが反応して横から見えると仮定しても、点ではなくて屹立する棒状に見えるはず。
●ライトサーベルの刃と刃がぶつかったら、互いにするっとすり抜けるのと違う? レーザーメスが交叉したらどうなるかを想像してみて。
●ライトサーベルの刃は、どーしてみんな同じ長さなん? 色はけっこう違うのにさ。
●レーザー銃は反動がない(はず)。
●レーザー銃で撃たれたら貫かれて死ぬような装甲など、着ないほうが戦闘しやすいよ、帝国軍。
●狭い空間で銃撃しまくっても、壁には傷ひとつつかないね。それに、跳弾って発生しないの?
●二足歩行ロボットは、メカとしては最も効率の悪いものである。
●イウォークは直立歩行に適応した形態をしていない。
●チューバッカは、なんでアクションシーンに参加しないんだ?(ぬいぐるみだと、動きにくいって?、笑)
●『ジェダイの復讐』よりも『エピソード2』のほうが古い時代の設定なのに、メカは後者のほうがハイテクになっている。
●レーア姫にホレるなんて正気か? 人生を捨てるなハン・ソロ。
●いろいろな種類の宇宙人が、同じ大気の中でマスクもなしに会議して大丈夫なのか、評議委員会。
●すべての宇宙人が直立二足歩行で、しかも唇でしゃべるけど、それでいいのかアートディレクター。
●ヨーダの剣劇シーンでは、反作用が無視されている。
●レーア姫がアミダラ女王の娘だなんて、ヘンだ。あり得ない。
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…まあまあ、『スターウォーズ』はただのおとぎ話なんだから、カタいことはいいなさんなというご意見もあるだろう。私も、むきになって否定する気はない。だけど、だとしても、それにしても、一歩も二歩も百歩も譲ったとしてもだな…
レーア姫だけはなんとかならんか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というようなバカ話をいつもの超美女としようと思ったら、彼女に一瞬で切り捨てられた。
「子どもの観るもんでしょ、あんなの」
うっ、うううう…。
[上の文章は、約4年前に書いたものです。]
[original from 【猫哲学HP】 http://nekotetu.com]
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