2009年1月27日火曜日

【猫哲学88】 チンチラなお話。

 
       猫┃哲┃学┃の┃お┃部┃屋┃μ┃


 こないだ、ある女性と話をした。いつもの超美女とは違う人である。

「チンチラって、かわいいわよねー」

「チンチラ? そんなにかわいいかな」

「何を言ってるの、あれをかわいいと思わないなんてヘンよ」

「まあ、人の趣味はいろいろだから」

「眼なんかきれいなブルーでねー」

「ブルー? 赤だと思っていた」

「この色盲男」

「色盲なのは認める」

「私もチンチラ飼いたいなー」

「ワシントン条約にひっかかるんじゃないか?」

「えー? 友だちみんな飼ってるわよ」

「不思議な交友関係だね」

「あのね、チンチラに恨みでもある?」

「いやいや。ただ、毛皮にされないでペットになるなんて幸せなチンチラだなーっと…」

「毛皮あ?!!!」

「うん、よく見かけるよ」

「ひどーい! 何てことをするのよ。嘘よ。そんなことできるわけないじゃん」

「うん。ワシントン条約のおかげでましになってきたらしいけど、飼育しているのはOKだから、まだ売ってるよ」

「飼育? 毛皮にするために?」

「そう」

「許せない。どーしてチンチラちゃんにそんなことができるの。嘘よ、ぜーったい嘘よ。私を騙してるでしょ」

「でも、こないだだって、ヒルトンプラザのブティックにストールがあたし…」

「嘘つき。嘘にしたって、あんまりよ。どーしてそんな残酷なことを思いつくかな」

「待ってくれよ。オレが嘘つきだと。たしかに嘘つきではあるが、でも調べりゃすぐにばれるような単純な嘘をつく男じゃないぞ」

「そんな人だとは思わなかった。絶交よ」

「べつにかまわないけど、毛皮なんてものはずっと昔からそうして利用されてきたんだから、オレに責任はない」

「二度と口をききたくない」

「じゃあそうしろよ」

「ここの猫が心配だわ。鍋にでもして食べるつもり?」

「おいおい」

「そんな人が猫を飼う資格なんてない。何が猫哲学者よ」

「何だか話がずれていないか?」

「猫ちゃん、おいで。連れて帰ってあげる」

「うニャ?」

「それはよかった。オレも楽になる」

「こんな愛のない人に飼われていたなんて、不幸な猫ちゃん」

「たしかに幸福とはいえないな」

「冷たーい。人間とは思えない」

「思ってくれなくてけっこう」

「じゃね、帰るから」

「でも、ちょっと待てよ。そやつを引き取るってことは、チンチラは永遠に飼えないな。お気の毒さま」
「何を言ってるの、チンチラも飼うわよ」

「へ? そんなむちゃくちゃな」

「そっちこそわけのわからないことを…」

「だって、そのバカ猫がチンチラを獲って食うかもしれんぞ」

「またひどいことを言ったー!」

「そうはいってもだな、チンチラだってネズミの仲間だし」

「何をバカなことを言ってるの、チンチラは猫よ。猫が猫を獲って食うなんて話、どうやって思いつくのよー、変質者」

「そっちこそ何を言うとるんだ。チンチラは齧歯類だ」

「チンチラは猫よ」

「正気か?」

「あんたこそ狂ってるわよ」

「変質者だの○キだの、よーも言うてくれたな。よっしゃ、見せたろうやんけ、オレの平凡社『世界大博物学事典』に勝てるものならやってみろ」

「私だって、さっき『月刊にゃんこ倶楽部』を買って来たもんね。見せてあげるわよ」

 ガタドバタッ(平凡社世界大博物事典哺乳類編の音)

 バサドサッ(月刊にゃんこ倶楽部の音)

「ほれみろ、チンチラだ」

「これよ、チンチラよ」

(しばし静寂)

「あ」

「あ」

「…いま、天使が通り過ぎなかった?」

「うん、通り過ぎたね」

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[チンチラ]

1:リス目チンチラ科のほ乳類。毛皮用に乱獲され、絶滅に瀕する。

2:飼い兎の一種。フランス原産。チンチラウサギ。皮革用にも飼育。

3:チンチラ猫。長毛種の家猫。ペルシャ猫のバリエーション。

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 かなり誇張して書いているけど、本当にあった話である。誤解って、怖いね。

 以上の話は言語論の本質に結びつく重要な話なのだ。解説はめんどうなので、今回は書かないけど。

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 で、このお話にいつもの超美女が登場すると、話はぜんぜん違う展開になっていくのであった。

「あ、ほら。昔パチンコのことを言ってたじゃない、えーっと」

「それはチンじゃら」

「ぐずぐずやってんじゃないよって怒鳴るときにさ…」

「それは、ちんたら」

「むやみに威勢のいい兄ちゃん」

「チンピラ」

「大昔、箱を開けたら大騒ぎになったでしょ」

「それはパンドラ」

「京都のおつけもの」

「それは、べったら」

「ついでに蒲鉾も」

「別寅」

「ごぼうの笹掻き」

「きんぴら」

「シベリアタイガーの住んでいるあたりの土地を…」

「それはツンドラ」

「あれ? タイガじゃなかったっけ?」

「あ」

「やーい、ひっかかった」

「おのれ、姑息な技を。口惜しい」

「チベットの混み合った仏さんの絵」

「それは曼陀羅」

「オウム真理教がやってた無粋な音」

「それはマントラ」

「昔のインドのおっかない神様」

「それはインドラ」

「三蔵法師が旅をしたのは」

「ガンダーラ」

「バラモン、クシャトリア、バイシャときたら」

「スードラ」

「インド仏教方面って、いくらでもありそうよね」

「そうだな、きりがない」

「方向を変えるわよ。お魚で、味噌漬けの西京焼き」

「それは銀鱈」

「♪~あなたのために、守り通した~」

「ぴんから」

「ベネツィアへ行ったら乗るのは」

「ゴンドラ」

「東ローマ皇帝ユスティニアヌスの后だった女傑ってだーれだ」

「テオドラ」

「ルネサンス・イタリアの大人文学者」

「ピコ・デッラ・ミランドーラ」

「バカヤローは大阪弁で」

「あほんだら」

「アニメ巨人の星!」

「こんだら」(注)

「すけべえな連中」

「ふしだら」

「海に住んでるぐねぐねの」

「ヒドラ」

「やばいお金をちょろまかして香港へ」

「とんずら」

「あらまあ、白雪姫が」

「死んでレラ」

「…まだ続ける? ちょっと息が切れてきたわよ」

「オレも。脳が沸騰しそうだ」

「それに、チンチラから離れてない?」

「軌道修正するか?」

「よーし、丼にサイコロを振って、博打」

「それはチンチロリン」

「あ」

「あ」

「いま、天使が通り過ぎたわね」

「通り過ぎたね」

 しりとりは、「ん」が出たところで終わりなのであった。ほへ。

(注)「こんだら」は、知ってる人は知っている常識ですが、知らない方にはご質問いただければ解説します。


[上の文章は、約4年前に書いたものです。]
[original from 【猫哲学HP】 http://nekotetu.com
[mail to:nekotetu@mbr.nifty.com]

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