2009年1月26日月曜日
【猫哲学54】 熊さん、どうしたの。
猫┃哲┃学┃の┃お┃部┃屋┃μ┃
(2004/11/21)
今日は、わが家の主はお出かけニャのだ。
え? ボク? いや、おなじみのバカ猫ですニャ。ふだんは黙っているけど、あのおっちゃんがいないところでは、ときどきしゃべってみたりもするのニャ。
今日もボクは、窓の外をながめてぼーっとしていたのニャ。すると見慣れない動物が通りかかったノラ。
「おいおい、きみ、いったい何者? どこからきたニャ?」
「あいやー、猫さんではありませんか。私のこと知らない? 去年、ユーメイになったあるのになあ。あのハクビシンとは私あるよ」
「誰? それ」
「ああ! もう、嘆かわしいことあるね! ついこのあいだ新型肺炎SARSの感染源として大騒ぎになって、中国本土では大量虐殺されたあるのに!」
「ほにゃ。そういえば、そんなこともあったニャ。BSEだのコイヘルペスだの、チャボインフルエンザがどうとかこうとか、いろいろありすぎたんで、忘れていたニャあ」
「あいやー。ニンゲン忘れぽいのは仕方ないけど、猫さんまでかんたんに忘却してほしくないあるよ」
「ごめんニャ、なんでも忘れるのが得意なのニャ」
「猫さん、安心してはいけないあるよ。いずれあなたも、猫エイズ、猫ヘルペス、猫インフルエンザなんて追求されて、命を狙われるあるよ」
「へにゃ。そんなことになるかニャ」
「時代を読むセンスだいじいね。21世紀は感染症爆発の時代あるね。いまタイでは、トリインフルエンザが猫さん虎さんに感染して、大騒ぎあるのよ」
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おい、バカ猫。何を熱心に外を見とるんだ。
「家主が帰ってきたニャ、ほんじゃまたニャ」
あ、あれは、もしかしてハクビシンじゃないか。こんなところにもいるんだなー。かわいいじゃないか、なあ、バカ猫。
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ハクビシンなんて動物がなんで日本にいるんだ、と思ったあなたは認識が古い。あいつらは日本になんぼでもおるのだ。知らなかったですかな?
ハクビシンって、いい感じの名前ですよね。なんか由緒がありそう。響きも美しい。何だか白蛇伝を思い出すな。白鼻心と漢字で書いてしまうといまいちだけど。
その名の通り、鼻すじに白い線が一本通った、タヌキみたいなみかけの動物である。ウィルス性急性肺炎SARSの騒動のさいにテレビでさんざん映像が流れたから、ごらんになった人は多いはず。あれは中国での騒ぎだったが、ではなぜ日本にハクビシンがいるのかって?
江戸時代の動物の記録にはハクビシンは登場しない。なので、あいつらが日本にやってきたのは明治以降のことと考えられている。おそらく中国人が食用として持ち込んだものが逃げ出して定着したのだろう。あるいは、戦前戦中に中国大陸へ悪さをしに行った日本人が持ち帰ったのかも。今では北海道から九州まで、日本の野山でふつうに暮らしているありふれた動物になってしまっているのだよ。タヌキやキツネやイタチのようなもんだな。
ジャコウネコ科の動物なんだそうだ。ジャコウネコって動物はよく知らないが。前からみるとタヌキみたいだが、横からみるとリスのようなシルエットをしている。ふだんは木の上で暮らしていて、夜になると水を飲みに川辺にやってくる。その姿がよく目撃されるのだけど、ほとんどの人は「あ、タヌキだ」と思ってしまうので、ハクビシンが日本でもありふれた動物だとは、なかなか認識されないようだ。
でも、そのほうがいいのかもしれないな。昨今のSARSにまつわる混乱をみていると、もしも野良ハクビシンの存在が日本中で一般に認知されようもんなら、大々的な山狩り、大量虐殺がはじまってもおかしくない。
あんまりだよな。だって彼らがSARSの感染源だなんて話は、嘘にきまっているからだ。ハクビシンというのは、食用動物として中国の市場でふつうに売られているんだぜ。当然、それを飼育したり、流通させたり、買ったり、解体したり、料理したり、食ったりする人がぎょうさんおるわけで、なのにその関係者の誰ひとりとしてSARSに感染していないんだもんな。
あれは、感染源を特定できなかった中国当局が、なんとかして原因をでっちあげようとしたにきまっている。濡れ衣ってやつだ。そのために10万頭以上のハクビシンが煮て殺され、埋められた。あまりに哀れではないか。まあ、そうでなければ料理されて食われてしまうわけなのだから、ハクビシンにとってはどっちでもいいことなのかな。いやいや、よくないような気がする。うーん…、私はハクビシンではないのでその気持ちまではわからないが。
実をいうとハクビシンは、東京都内の公園でも確認されている。彼らの平和な生活が危機にさらされないように祈りたい。なんたって住宅地にアナグマが住み着いただけで、警察が動員されるお国だ。ハクビシンよ、なるべく目立たないように生きろよ。
さて、野生動物が人里に出現したって、ハクビシン程度ならほほえましいものだが、熊となるとそうはいかないよな。場合によってはこちらの命があぶない。
でもさいきん増えましたねー、熊の出現が。本州で出てくるのはツキノワグマ。体長140cm程度、体重も60kgくらいのもので、そんなにこわくないよ。あいつらだって人間がこわいのだから、できるだけ出会わないように努めてはいるのだが、やはりドジなやつもいて、ばったり遭遇しちゃうこともある。そうなるとお互いパニック、熊は爪と牙というすげえ凶器をもっているから、人間はかなりやばいことになる。
同じ熊でも、北海道のヒグマは体長2m以上、体重300キロなんてやつもいて、しかも肉食中心だから、人間は餌として襲われる。これはこわい。でもこいつは、近頃あまりご登場なさらないようだ。昨今の騒ぎの主役は本州のツキノワグマである。
しかしなあ、いったいなぜ今年になって熊の出現がいきなり増えたのだろうか。世の中では、今年は台風が多かったからだというのが定説になりつつあるが、それだけかな。私は、どうも違うような気がする。
台風原因説の主張とは、以下のようなものである。まず今年は猛暑だたので、ドングリなどの木の実が早く熟した。そこへ台風がやってきたので、木の実は早々に地面に落ちてしまった。それで熊は食べ物がみつけられなくて、人里に降りてくるのだという。
じっさい、射殺された熊の胃の内容物を調べてみると、ほとんど空っぽだそうだ。これから冬眠しなければならない熊は、本来は胃の中にいっぱい食べ物をたくわえていなければならないという。
台風ねえ…。たしかにそれも原因のひとつだと思うが、それだけだろうか。木の実が地面に落ちたからといって、じゃあそれを拾って食べればいいわけで、熊だって腹がへったらそれくらいのことはするだろう。木の実がぜんせん実らなかったというのが本当じゃないのかな。だとすればそれは、台風が原因とは考えられない。
だいいち台風は毎年くるものだし、それが異常に多かったといっても毎日のようにきていたわけではない。台風のように必然的に毎年くり返される自然現象に対しては、野生動物はとっくの昔に適応を終えているはずだ。今回のような異常出現の原因にはなりにくいのではないか。
もうひとつ気になるのは、日本海側に熊の出現が偏っていることだ。具体的には滋賀、石川、富山、新潟あたりに頻発している。熊は四国にだって和歌山や三重にだっているのに、こちらにはあまり出没していない。
今年の台風の軌跡を思い出してみると、特に日本海側が集中的に襲われたというわけでもない。九州も四国も和歌山も三重も、台風が通っていったのだ。だから熊被害は太平洋側でも同様に発生していいはずなのだが、こちらは意外なほど少ない。
もうひとつの原因として、過疎化と農業衰退の影響で里山が森になって、人間の住む場所と熊の住む場所が接近していることをあげる人もいる。でもそれが原因だとしたら、事態は数十年かけてゆっくり進展したはずで、最近になっていきなり増えたことの理由にはならない。それに出現が日本海側に偏っていることも説明がつかない。
原因は、ほんとうにそういうことなのだろうか。
私はこれから、非常に重要なことを書く。ほとんどの人が知らないことだが、でも事実である。しかもたいへんなことである。嘘だと思ったら、調べてごらんになるとよい。日本を襲う恐怖の未来を、ちゃんと認識していただきたいと思う。
日本海側の森で、いったいなにが起きているのか。それは酸性雨である。だから木の実が実らないのじゃないのか。
日本海側の酸性雨は、じつは10年近く前から確認されていた。この現象にもっとも弱いといわれるブナの木々が、枯れはじめていたのだ。この事実はほとんど話題にもならないまま、被害はどんどんエスカレートしてきていた。それには理由がある。
酸性雨というのは、工場排気ガスの硫化成分が雨雲にはいりこみ、やがて雨となって地上に降ってくる現象をいう。20年前のドイツでは、東ドイツやハンガリーやポーランドの工場群の排気ガスを含んだ雨雲がやってきて、森がどんどん枯れていった。その当時、貧乏だった共産圏では、製鉄や発電のための燃料に質の悪い石炭石油を使っていたので、風下にあたるドイツでの酸性雨被害は実にひどいものだった。
やがて東西冷戦状態は崩壊し、ドイツは旧共産圏に積極的な経済援助を開始する。貧乏国の古い工場群はしだいに近代化され、排煙の脱硫装置も装備されるようになって、燃料も質の良いものを使いはじめた。というわけで、ドイツの酸性雨被害はましなものになった。でも、今でも問題がすべて解決されたわけではないけどね。
では、日本の酸性雨の原因となっているのは、どこの工場群なのだろうか。…どお? 気がついた? だったら、恐怖を感じるでしょ。
答えは、中国である。
いまや世界で最も活気に満ちた成長を成し遂げつつある中国。その経済成長は10%近いものだ。10%の成長率というのは、5年もすれば倍になるということだ。その中国だが、工場や発電所は意外に古くて、ほとんどが文化大革命当時に建設されたもの。燃料には石炭を使っている。中国は石炭の大産出国だから、石油よりも石炭を使うほうが安い。つまりオンボロ工場で石炭を大量に燃やしてるのだ。もちろん、排煙脱硫装置なんて贅沢なものはつけているわけがない。その煙は想像を超えるようなものすごいもので、現地では公害がどんどんエスカレートしてきている。
そしてその煙は、風に乗って日本にやってくるのだよ。春には中国大陸の黄砂が日本に飛んでくることを思い出せば、納得いただけることだろう。
さあもう一度、よく考えてみよう。中国の経済発展が始まったばかりの10年前でさえ、ブナは枯れはじめていた。そしていまや、中国は経済大国への道を疾走している。では、工場や発電所をかかえる現地ではどうなっているのか。排煙の量は、そして公害の程度は…。
熊の出現が日本海側に偏っていることを思い出してほしい。雨雲に含まれる硫化物が日本に到達すると、日本列島の中央にそびえる脊梁山脈(日本アルプス)にぶつかって、ほとんどは日本海側に雨となって降り注ぐ。太平洋側にもやってくるが、それは日本海側とくらべるとわずかなものである。裏日本の山で、いったいなにが起きているのか…。
しかも、たかだか人口4000万ほどの東欧諸国が出した煙でさえドイツではひどいことになったのに、人口10億の中国が経済発展するとなると、そのマイナス面も日本では想像を超える規模になることはまちがいない。
酸性雨というのは、まず初めに森が枯れるけど、それだけでは終わらない。時がたてば、下流の平地が不毛の荒野になる。日本でいうと、米がまったく収穫できなくなるということだ。いや、もっとだな。日本海側のすべての地域が、人も動物も住めない土地になるのだ。太平洋側だって無事にはすまない。
環境庁だって、ほんとうはこのことをわかっているのではいないだろうか。でも、たいへんだたいへんだと騒ぎ立てても、中国にむかってなんとかしろよと主張する勇気なんて官僚にあるはずがない。どうにもならないのだ。どうしようもないことを騒いでも無駄だから、黙っていようというのが政府の本音じゃないのか。
またこわいことを書いてしまったな。でも真実というのは、ときにはこわいものなのだ。これもまた哲学的思考の一側面ではある。
では、どうすればいいのか。猫哲学では、問題を提示したまま放り出すということを、これまではしてこなかったつもりだ。けっこう無責任じゃないのよね。読者のみなさんは気付いていないと思うけど。
だから私は、ここでも解決の方向を示すのである。といっても、すっごく簡単なんだけどね。
日本の1960から70年代は、公害問題の時代でもあった。覚えている人は少なくなったけど。その時代のつらい経験を経て、日本人はいろいろなことを学んだのだ。そのひとつに、高性能な排煙脱硫装置の開発もある。日本人は自慢していい。この分野での技術、機械製造能力においては、世界一なのだ。人類の宝といっていいほどの能力を、日本は持っているのだよ。
これを、中国に提供すればいいのだ。ことは簡単なのである。無駄なうえに役にもたたない対中国ODAなんかやめちまって、中国の公害問題を解消しましょうね、なんてきれいごとを並べ立てながら、恩着せがましく排煙脱硫装置を工場に据え付ける手伝いをすればいいのだ。
本音をいえば、日本に降る酸性雨の緩和が狙いである。だけど、これを真正面から交渉の舞台に乗せれば、「日本人が迷惑するのって、ざまあみろって感じで、ちょっといいかも」と解釈されて、中国人には説得力がない。日本人は対中戦争のさいにとても汚らわしいことをやったので、あの国の人からはものすごく憎まれているのだ。このことを若い人は知らないし、老人たちは中国人を軽蔑しているからちゃんと認識できていない。某都知事が平気で「チャンコロ」などと暴言をいっても誰も気にしないようにね。
そんなとこへ、「日本人が、中国の公害のことを真剣に考えて、手助けをしてくれた」なんてことが中国全土に知れ渡ってごらんよ、最高の国際親善ではないか。それこそ、日中戦争以来のわだかまりを解消する手がかりになるかもしれないじゃん。一挙両得とはこのことだ。政治というのはそもそもこんな風にやるべきなんだけどな。私利私欲にこり固まった日本の政治家には無理かな。
ハクビシンの故郷、お隣の中国とはうまくやろうよ。でないと、ハクビシンだって日本では肩身が狭いじゃないか。なあ、バカ猫。
あ、やっぱり寝てやがる。
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こんな話をいつもの超美女としていたら、彼女は瞳をぎらりと輝かせてこういった。
「ハクビシンって、おいしいんだって」
美女に情がないというのは、真実である。
[上の文章は、約4年前に書いたものです。]
[original from 【猫哲学HP】 http://nekotetu.com]
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